ガンウイルスを知る
ガンの研究の中で近年著しい発展をしているのが、ウイルスによる発ガンの研究です。1911年にニワトリに肉腫が発生するウイルスが発見されたのがはじまりです。これ以降、次々と新しいガンウイルスが発見され、ガン発生のメカニズムの解明に大きく貢献しています。
ガンウイルスはレトロウイルスと呼ばれるウイルスの仲間で、ニワトリのみならず、マウスにも、ネコ・牛・霊長類などにも見つかっています。特異な例として、人の咽頭(のど)の扁桃腺にいつも存在しているアデノウイルスの中で、12型と呼ばれるものがハムスターにガンを発生させる強力な作用を持っていることが分かっています。
通常遺伝子の情報伝達は、DNA→RNA→タンパク質という具合に行われます。これと逆の反応をするものを「逆転写」言い、その酵素を逆転写酵素と言います。レトロウイルスと呼ばれるガンウイルスはすべてこの逆転写酵素を持っており、これが発見されたことがガンウイルスの研究を大きく飛躍させました。
ガンウイルスの研究は進み、正常な細胞にもガン細胞とそっくりな遺伝子が潜んでいることが分かっています。何種類ものガン遺伝子の間に、種の壁を越えて、構造上、活性上の類似性があることも分かってきています。
一見悪いと考えられていたガン遺伝子が、実は正常な生物に必須な遺伝子で、それ故に、長い進化の途上でも変化せずに保存されてきたことになります。
正常な細胞の中にあって、ガン遺伝子は一体何をしているのでしょうか。どうやら、正常な細胞の増殖や分化をコントロールしているようなのです。そして、それは欠くべからざるもののようです。
どうもこのように調べてくると、人間が好き勝手放題に化学物質を作ったり、放射線を多用したりすると、スイッチがオンになる、つまり、時限爆弾を身体の中に抱えているようなものです。神の配剤でしょうか。
アフリカ、中でも高温多湿で年間降雨量が500mmを超える地域を主として発生しているのが、バーキットリンパ腫と言われるウイルスによって発生するガンがあります。
小児の顔面にできるガンで、感染後2〜3週間で顔の形がなくなってしまうほど増殖して腫上がってしまいます。放射線や化学療法によって治療することが可能です。このガンにはEBウイルスというのが関わっています。
伝染性単核症という、リンパ腺が腫れ、血液の中に白血病細胞と似た細胞が現れ、放っておいても数週間で自然治癒してしまう「一過性の白血病」と言われる病気にもEBウイルスが関係しています。
さらに、人のウイルス性のガンにはヘルペスウイルスがあります。1型と2型があり、1型は口びるに水疱をつくり、2型は女性の外性器に水疱をつくります。2型は子宮ガンの発生と関係があるとされています。
欧米ではアルコール飲用がもとで肝障害を起こし、肝硬変から肝臓ガンになる場合が多いのに対して、日本では肝炎ウイルスが原因の場合が多いのが特徴です。
肝炎ウイルスはA型・B型・非A非B型の3種類があります。A型に感染した場合には黄疸が出る程度で、ほとんど後に影響が残ることがないのに対して、B型や非A非B型に感染すると、激しい症状のもとに数日で命を失うこともあります。何とか乗り切っても、再発を繰り返して肝硬変に徐々に移行してゆきます。肝硬変の約40%は肝臓ガンになります。
では、どのようにして肝炎ウイルスは感染するのかと言いますと、血液や体液を介して感染します。輸血とか出産などに関係があります。しかし、現在は様々な治療法が確立されていますので、すべてが大事に至るということではありません。それでも、B型肝炎ウイルスが何故肝臓ガンを引き起こすのか全容は解明されていません。
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